私はJT(2914)を2022年3月に2,089円で購入しました。
そして、2023年6月に保有数の3分の2を3,213円で売却し、12月にさらに3分の2を約3,745円で売却しました。
現在は残りを「恩株」として保有しています。
買付単価2,089円だと2023年12月期の年間1株配当188円(予想)で利回り9%程ですが大部分は配当を得ずに売却しました。
株価3,200円でそろそろかと思って売却し、株価3,800円でまさかの上昇と思ってさらに売却しました。
自分が思っているだけだから、まだ株価は上昇するのかもしれませんが…。
また、株価3,200円を超えてくると配当5年分以上のキャピタルゲインを得られる機会があったのも売却理由です。
今回のJT株の売却利益は、高配当でJT(2914)より株価が上昇しそうな銘柄を探して再投資する予定です。
(JT株を保有し続けてその配当を再投資し続けるのも方法ですが、より効率が良い銘柄を探す可能性にメリットを感じました)
といわけで、JT(2914)を保有し続けても良かったのですが大半を売却しました。
今回は、あえて売却を考えたJT(2914)のデメリット要素を中心にまとめています。
(あくまで、わたし個人の考えですので投資判断は自己責任でお願いします)
【 目 次 】
JT(2914)の配当性向は高すぎる?(JTの配当性向の推移)
配当性向とは、企業の純利益の何%を株主に還元するかというものです。
2021年2月10日までJT(2914)の「株主還元方針」に配当性向は明示されていませんでした。
代わりに「1株当たりの配当金の安定的/継続的な成長」と表現されていました。
抽象的な表現ですが、JT(2914)は安定的に成長する見込みであり、配当も増配が続くと連想させるような表現でした。
この方針に基づいてか利益が減少し始めても増配は継続していました。
その結果、下図のとおり配当性向をグラフ表示にすると2020年12月期には88%まで上昇していました。
増配を続けて配当性向が100%を超えると財務状況も悪化していく可能性もでてきます。
このような状況もあってか「株主還元方針」は2021年2月10日に次のとおり変更されました。
「資本市場における競争力のある水準として配当性向75%を目安(±5%程度の範囲内で判断)とする」というものです。
「配当性向が明示された」一方で「1株当たりの配当金の安定的/継続的な成長」という文言が消えました。
今後は連続増配とは限らず利益に応じて出来る限り安定的に配当しますという表現に感じられます。
「1株当たりの配当金の安定的/継続的な成長」という以前の方針の実現が困難になったのだと思います。
実際、方針変更後の2021年度は減配されています。
さて、本題の「JT(2914)の配当性向75%は高すぎるのか?」という点です。
一般的に配当性向は30%前後の企業が多いので、他の企業と比較すると高い方といえます。
ただ、JT(2914)の配当性向はこの程度までなら問題ないと思います。
株主還元方針に「資本市場における競争力のある水準として配当性向75%を目安(±5%程度の範囲内で判断)とする」とあります。
配当性向75%程度であれば資本市場でも競争力を保てると経営陣は判断したのだと思われます。
なお、配当性向を一定にすると年度ごとの利益によって配当金額が増減して不安定になるデメリットがあります。
このデメリットを最小限するため、JTの場合は配当性向75%(±5%程度の範囲内で判断)と5%程度の上下幅を持たせてあります。
わざわざ上下幅を持たせたということは安定的な配当金額を維持しようと考えていると思われます。
JT(2914)の配当はなぜ高い
JTの配当(利回り)はなぜ高いのか?
まず、同じたばこ産業を営む外国企業の配当利回りを調べてみました。
(2023年12月25日現在)
企業名(国) | 配当利回り |
Philip Morris International Inc(アメリカ) | 5.6% |
Altria Group Inc(アメリカ) | 9.7% |
ITC Ltd(インド) | 2.8% |
British American Tobacco PLC(イギリス) | 9.9% |
日本たばこ産業(日本) | 5.0% |
(注)外国株は国内株式と異なり為替や外国税等の影響を受ける場合があります。
新興国のインドを除いて先進国のたばこ企業の配当は全て高いように見受けられます。
おそらく世界的に受動喫煙防止の流れによる逆風などがリスクと考えられているのではないでしょうか?
(受動喫煙防止の流れが加速するまではJT株も配当利回り2%程度まで買われた時期もありました)
また、世界の人口増加による喫煙者の増加もどこかで頭打ちになると思われます。
あるいは、たばこ産業は成熟していて大きな成長が見込めないと思われているのかもしれません。
こういった理由で、利回りが高くなる株価で収まっているのではないでしょうか?
続いて、JT(2914)の配当金が2022年12月期に急に高くなった話しに移ります。
配当金の推移を見ると2021年12月期の1株配当140円から、2022年12月期に1株配当188円と大幅増配となりました。
理由の一つは、2015年から減益傾向でしたが2022年12月期に2015年12月期と同程度まで利益が回復したことです。
加えて、株主還元方針を配当性向75%としたことで、2015年12月期と同程度の利益でも大幅還元となりました。(2015年度の配当性向を表示すると44%)
このように、JT(2914)の配当がなぜ高いという理由は大きく増益したことと配当性向を定めた方針によるものと言えると思います。
次に、大きく増益に転じた要因を確認しておきます。
1.紙巻たばこの値上げ(プライシング効果)
増益理由を確認する前に、まず2015年からの減益傾向になった主な要因です。
繰り返しになりますが、先進国の「受動喫煙の防止の推進」の影響でたばこの販売が減っているからだと思います。
また、電子たばこなどのリスク低減製品(RRP)が紙巻たばこの代わりに増えているのかというとJTの収益全体の2%くらいです。
未だ、JTの収益全体を占めているのは従来の燃焼性のたばこ製品(Combustibles)です。
先進国では電子たばこも禁止している国もあるくらいですので、先進国の喫煙者数は今後も一定値まで下がり続けると思われます。
この逆境の中、JT(2914)としては新興国で紙巻たばこの販売を広げようとしているのではと思います。
話しがややそれましたが増益に転じた理由です。
最も大きな要因は、紙巻たばこの値上げ(プライシング効果)です。
販売数量の減少を補ってなお利益を押し上げる力があったようです。
過去にも値上げはしていますが、世界的なインフレで大幅な値上げが成功したのでしょう。
当分は今回の値上げで利益を維持できそうです。
ただし、時間の経過とともにインフレも収まりつつあります。
値上げ余地は未だあると思いますが、値上げできる価格にも限界があると思われます。
2.外国為替市場での円安効果
増益要因の2つ目は為替要因です。
JT(2914)は円安が進むと増益要因となる傾向があります。
2022年12月期はドル円の例で115円程度から150円程度まで急激に円安(ドル高)が進むというまれに見る状況が起こりました。
2022年度決算説明会資料(プレゼンテーション)ではこの為替影響で調整後営業利益に621億のプラスと記載がありました。
なお、過去の為替影響も決算説明会資料(プレゼンテーション)で下表のとおり確認しました。
決算期 | 調整後営業利益における為替影響(億円) |
2015年12月期 | ▲998 |
2016年12月期 | ▲1107 |
2017年12月期 | 21 |
2018年12月期 | ▲417 |
2019年12月期 | ▲813 |
2020年12月期 | ▲574 |
2021年12月期 | 120 |
2022年12月期 | 621 |
過去8年分までしか調べられませんでしたが、円安傾向の時期でも為替はマイナスの影響を受けることが多いように感じられました。
おそらく新興国通貨(トルコリラ・ロシアルーブル等)は貨幣価値が下落しやすく円高に進む傾向があるからだと思います。
一部の新興国はハイパーインフレによって貨幣価値が急落することも記憶に新しいです。
その他、現地通貨でたばこを販売した後にドルに換えてさらに円に換えている間に費用や損失がかさむのかもしれません。
2023年12月期の為替影響はどうでしょうか?
2023年12月期第3四半期の説明資料では調整後営業利益に対し400億円程度の為替のネガティブ影響を見込むとの記載がありました。
単純に円安だから為替利益が発生するとは言えないようです。
なお、2023年12月期は為替のネガティブ影響(400億)を織り込んでも当期利益4,640億円の見込みと記載がありました。
当期利益4,640億円を1株利益(予想)に直すと約261円、配当性向75%で1株配当は196円になります。
JT(2914)の資料では1株配当(予想)は188円(配当性向72%)のままの据置でした。
さて、今後の為替相場ですが米国の政策金利の引き下げが近づくにつれて円高傾向になると思われます。
また、日銀のゼロ金利政策解除の可能性が高まるにつれても円高傾向になると思われます。
JT(2914)にとっては為替相場は不利な状況が当面は続くかもしれません。
JT(2914)のロシアリスク
最後にロシア事業のチェックです。
2022年度決算説明会資料(プレゼンテーション)で確認しました。
2022年度実績でJT(2914)の調整後営業利益に占めるロシア事業の割合は22%程度です。
2023年12月期見込みでは調整後営業利益の25%程度を占めると予測されています。
全体に占める割合はかなりのもので、もし撤退となると影響も大きいと思います。
実際、撤退するかもしれない懸念が広がった2022年2月のウクライナ侵攻時は株価が15%近く下落しました。
(私はその辺で思い切って購入出来ましたが、1年後にここまであがると思ってませんでした。ウクライナリスクがあるものの配当利回りが高かったので複利運用していけば良いくらいに考えていたと思います)
なお、決算説明などを見る限りJTはロシア事業から撤退はしないで可能な限り事業継続すると受け取れました。
ただし、相手のある話しですのでロシア事業がどうなるか分からないリスクは付きまとうと思います。
まとめ
JT(2914)は2022年度の紙巻たばこの値上げで大幅増益になりましたが、毎年同じ規模の値上げが出来るとも思われません。
また、増益要因を助けた急激な円安による為替のプラス効果もめずらしい現象と思われます。
要約すると、個人的に値上げ効果が通期寄与する2023年12月期がJTの業績の目先の天井(高値圏)になるのではないかと思いました。
とはいえ、サプライズがない限りJT(2914)の株価が大幅に下落するとも思ってはいません。
2023年12月28日の配当権利落ち後、株価は3,000円~3,500円あたりで推移し1株配当188円前後を維持していくのではないでしょうか?
リスク要因としては主に為替要因とロシア事業撤退があると思います。
2つとも業績に影響する程度は同じくらい大きいと思います。
ただ、為替リスクは2023年12月期ですでに400億円のマイナスで折り込んでも4640億円の利益を見込んでいます。
来期以降の為替要因がよほどマイナス影響がない限り今期と同程度の利益は見込めるのではないでしょうか?
次のロシアリスクについては半分忘れられていて折り込まれていないように思います。
しかし、万が一、ロシア業績撤退が発生しても配当150円前後は維持できると思っています。(ロシア事業の割合が25%程度のため)
このように考えると、大きな成長はなくてもJT(2914)はしばらくは安定的に推移するのではと思いました。
言い換えると、JT株は配当利回り5%~6%程度の株価で停滞するのではとも思いました。
そうであるなら個人的には高配当でキャピタルゲインも狙える他の銘柄に乗り換えた方が良いと思ったわけです。
といっても、予想に反して株価が上がっていくということもあるかもしれません。
その場合でも「売ったら上がった」と感情的にならない意味でもJT株を全て売却しませんでした。
安値で買えた一部は恩株として複利運用していくつもりです。
今回は私の備忘録(個人的な記録)のような内容でしたが、参考になる部分があれば幸いです。