マンションの高層階は道路から遠くなるから騒音が聞こえてこないとも思えますが、実際は良く聞こえるという相談を頂くことが何回かありました。
いずれも幹線道路沿いや騒々しい駅前のマンションでした。
交通量の少ない道路沿いであれば、特に問題はないと思います。
今回は、マンション管理士等の資格を保有する元不動産会社員の視点から、道路の騒音について説明していきますので、ご参考ください。
【 目 次 】
道路沿いのマンションはどの階数でも響く騒音
騒音は階数によってどのように聞こえるかという問題ですが、どちかというと高層階のほうがよく響くようです。
マンションは気密性が高く、玄関ドアや窓を閉め切るとツーンと耳鳴りがするくらい静かな空間になることを経験されているのではないでしょうか?
この気密性がかえって道路の騒音に限らず物音を気にしやすくしている要因にも思われます。
さて、実際の道路の騒音はどうなのかというと10階にお住まいの方から車のタイヤ音が夜に聞こえて寝付けないという相談を頂くこともありました。
10階といわず、タワーマンションの20階にお住まいの方からも、スケボーの音がうるさいというような相談もいただきました。
(20階以上の建物を担当した経験はありませんので、それ以上の階数は具体的に分かりません。)
道路をゴロゴロと転がるタイヤ音に限らず、スケボーの音、酔っ払いの大声まできっちり聞こえてきます。
異なる2つの大手デペロッパーの不動産会社に勤めた経験から建物の造りというより立地の問題だと思います。
音を取り込むと反響しやすいバルコニーが道路側を向いているとさらに音をひろいやすくなると思います。
バルコニーで受けた音は隣接住戸のバルコニーへ次々と反響しやすいです。
また、道路をはさんで両側に建物が多いとより音が反響しやすくなりますが、建物がそれほどなくても意外と上に響いてきます。
さらに、周辺が静かになる深夜は特に音が響きやすくなります。
問題になりやすい立地は、幹線道路の沿いでは物流トラック等の車両の往来が深夜でも絶えません。
駅前やたまり場のような場所は酔っ払いや若者の遊びが絶えません。
騒音を気にする方は、深夜に騒がしくなる場所、幹線道路、駅前、たまり場の近くのマンションは避けた方が良いかもしれません。
階数による違いですが強固な塀でもあれば、1階の方が聞こえにくいかもしれません。
低層階にお住まいの方より中・高層階にお住まいの方から車の音の相談を多くいただいたことを考えると、中・高層階の方が音がよく聞こえるのだと思います。
また、同じタイヤ音でも高層階に反響してくる音は独特の耳ざわりな感じもあると思います。
全てのマンションがそうとまで言い切れかもしれませんが、おそらく程度の違いはあれど同じような状況になると思います。
さて、車のタイヤ音ですが「窓も閉めているのになぜ音が聞こえるのだろうか?」と思われるかもしれません。
新しいマンションでは、音をさえぎる効果のあるペアガラスを用いて遮音性が高いと宣伝までされています。
しかし、実は「台所の換気口」「エアコンの室外機と室内機」「各部屋の換気口」等の隙間から音が入ってきます。
このような形のものが居室内についていることが多いです。
この換気口は全開にしたり少し閉めたりできますので、調節するか全部閉めてしまうのも騒音対策の一つになるかもしれません。
その場合は、24時間換気については「弱」にでもしたらいかがでしょうか。
24時間換気もスイッチのカバーそのものを開くと、24時間換気を停止するボタンもついていると思います。
ホルムアルデヒドのシックハウス対策等で、24時間換気システムの設置は2003年から義務付けられていますが、24時間換気の運転するか否かは自己責任になります。
騒音が気になる深夜の短時間だけ停止するというのも方法ですが、おそらく改善はあまり期待できないでしょう。
かえって結露によるカビの問題で困ってしまうかもしれません。
道路沿いのマンション(賃貸・分譲)の騒音対策
この記事をご覧いただいている方ですでに道路沿いの高層階にお住まいの方もいらっしゃると思います。
(未だお住まいでない方は次の見出しまで飛ばしていただいても構いません。)
お住まいの建物の居室内でとれる対策は音の侵入する隙間を防ぐことです。
隙間の場所は先程説明したとおりですが建物によって異なりますので探してみてください。
その次は窓から伝わる音の対策になります。
賃貸マンションの方は大家さんの許可がないと居室内の改造全般は難しいです。
許可の必要がない方法としては窓枠を傷つけない「窓用ワンタッチ防音ボード」などが市販されています。
予算をかけられる方は検討できます。
ただ、予算をかけても賃貸の場合は退出時に不要物になります。
そこで、予算をかけずに試験する方法があります。
安価なエアー緩衝材(通称:プチプチ)を使います。
音が入ると思われる隙間や窓の内側をプチプチで密閉します。
このように試験をすることで音の入り口の原因を特定できます。
また、防音効果を実感できます。
このままの状態で良い場合はプチプチを防音にするのもありです。
カーテンをすれば見栄えは変わりません。
デメリットは「窓枠」ごと密閉しますので窓の開閉ができなくなります。
プチプチで防音効果を得られない場合もあるかもしれません。
その場合は窓の内側面にピッタリ貼ると断熱になります。
真冬の寒さや結露を防ぐことができます。
フリマの緩衝材などにも利用できると思います。
無駄にならないようならチャレンジしてみる価値はあるかもしれません。
次に、アクリル板などで賃貸でも簡易な窓を付ける方法があります。
プチプチで効果を実感した後に設置するなども選択肢です。
コスパが良いです。
余談ですが「防音カーテン」は効果が低いのでおすすめできません。
最後に、賃貸の防音に10万円以上の費用をかける場合は引越してしまうのも選択肢です。
物件によっては引越し費用を一部負担してくれる賃貸仲介会社もあります。
分譲マンションにお住まいの方も既存の窓ガラスは共用部分になりますので改造するには管理組合の許可がいります。
簡単にできる方法はリフォーム申請を管理組合にして、新たに専有部分に内窓(インプラス)を設置する方法です。
数百万円かかりますが吸音材を施工して居室全体を防音するという方法もあります。
その他は、居室内のベッドの配置や寝室を変更するくらいではないでしょうか?
分譲マンションの場合はすぐに引越せません。
引越する場合は、賃貸住戸として貸し出すか売却することになります。
検討前であっても不動産の仲介会社に売却査定や賃貸の無料相談をしておくと良いかもしれません。
なぜなら、住戸の査定は時間が過ぎてからでは遅い場合があります。
日本の不動産の価値はおおむね駅からの距離(10分以内)と都市圏かどうかで決まる傾向があります。
地方の場合や都市や駅から遠い場合はマンションを購入後から下落して約10年から15年経過して下げ止まります。
不動産の売買を100件以上見てきましたが10年も経過する頃には購入価格の半分以下ということも珍しくありません。
逆に、東京23区などは都市圏は価値が下落するどころか駅から近いマンションは価格が上昇することもあります。
2020年現在は横ばいになりつつありますが2008年のリーマンショックからは中古マンションの価格は上昇し続けました。
都市部では査定をしてみると売却益が出る場合もあります。
不動産の査定をする場合は複数に査定を依頼し、ご自身に合ったところを選ばれるのが良いと思います。
査定の際に売却の相談や賃貸に出す相談もできます。
道路沿いのマンションの階数による騒音のチェック方法
これからお住まいになろうという居室を知る方法は、なるべく「足を運ぶ」ことです。
何回か足を運ぶと時間帯や天候などの違いもあり、気づくことも変わってきます。
幹線道路沿いや駅前のマンションは利便性に魅力がある一方で、騒音をはじめ排気ガスなどが気になるところです。
自分で足を運ぶと同時に「内見」を不動産会社にお願いしてみることです。
入居しようと検討している部屋または道路からの位置関係が似た部屋で、実際の居室内に入って確認をするのが最も良い対策です。
あるいは、近くに同じ階数くらいの公共施設や建物があるのであれば、実際の階数まで行って道路側に立ってみることです。
その施設の居室内で確認が出来れば良いですが、それが屋外であってもある程度の参考になると思います。
私有地で入れない場合は、そこに住んでいる人に聞くことも参考にはなるでしょう。
内見の話に戻りますが、通常は日中に居室内を見学することになると思います。
その際は、窓やバルコニーを完全に閉めた状態で「深夜の静けさ」をイメージしながら周辺の音を聞いてみてください。
日中は気にならないと思ったけども入居して深夜になるとこれほど大きく音を感じるのかという場合もあります。
夜間見学は難しいと思いますので、夜中は建物周辺を歩いて確認するのも良いかもしれません。
百聞は一見に如かずともいいます。
実際に行動して調査をしておくことが一番の対策になると思います。
先程も説明したとおり入居後に出来る対策は限られており効果があまり期待できないからです。
道路から離れたらマンションの騒音はなくなる?
幹線道路からどれくらい離れたら騒音は気にならなくなるのでしょうか。
実は、幹線道路と入居する建物の間にビルひとつあるだけでも圧倒的に音は静まります。
これは幹線道路と入居する建物の間のビルが反射板になっている状況です。
しかし、そのビルが取り壊されて駐車場になったらどうでしょう。
そのようなことも想定すると、幹線道路の騒音を気にされる方は建物を3つ以上挟んで少なくとも50m以上、理想的には100m以上は離れたた立地を選びたいところです。
その距離まで離れると「閑静な住宅街」のエリアになる場合がほとんどです。
なぜなら、建築基準法という法律があり「建物の高さ」は、その地域の用途制限、容積率等で制限されます。
つまり、この法律がある結果、道路幅の広い幹線道路の両側に高い建物が並びやすくなり、幅の広い道路から離れると建物は低くなる傾向があります。
言い換えると、道路の騒音をさえぎる壁が並ぶような現象になりやすいということです。
あらためて街の広い道路の両サイドを見てみてください。
確かに高い建物が並んでいるとお気づきになるかもしれません。
道路沿いのマンションの騒音以外のデメリット
騒音以外のデメリットにも少し触れておきたいと思います。
排気ガス・粉塵
幹線道路沿いの建物は、黒い煤(すす)のようなものが付着します。
排気ガスなのかタイヤの削れた粉塵なのか。
この黒い煤は、交通量の多い都心であれば幹線道路から100m離れても、居室内の換気口(給気)の周辺に付着することが多いです。
道路沿いであれば、この状況はさらに悪くなります。
洗濯物が干せないほど1日で真っ黒になることはないとしても、1週間ごとに洗濯する人は物干し竿が真っ黒になっていて洗濯物が汚れるということは十分にあり得ます。
この洗濯物の影響は、低層階ほど強くなります。
振動
深夜は物流トラックの往来が増える場合が多いです。
事前に確認しておきたいところです。
また、重量のある車両が通過する際は、騒音も大きいことに加えて振動で建物が小刻みに揺れる可能性が高いです。
振動についても低層階の方がより影響を受けます。
プライバシー
道路沿いのマンションに限ったことではありませんが、道路をはさんで向こう側の建物からバルコニーが見える場合が多いです。
また、低層階ですと歩道橋などを歩く人と目線が合うということもあります。
まとめ
音の感じ方には個人差があります。
今回は、道路沿いのマンションにお住まいの方で、音が気になるという方の意見をもとに説明をしました。
もちろん、道路沿いでも音は気にならないという方もいらっしゃいます。
繰り返しになりますが、大切なことは入居する前に実際の居室を内見することと、内見するときには間取りや設備の他に、周辺が静まりかえる深夜を想像して騒音チェックもしておくことも大切になります。
あらかじめ自分用のチェックリストを作って、お部屋探しをされることをおすすめします。
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