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発電側課金(基本料金)の太陽光FITへの影響

2022年3月9日

発電側課金(基本料金)の太陽光FITの利回りに与える影響

今回は発電側課金の現時点でのインフラファンドの利回りに与える影響を試算しました。

結論は、発電側課金が採用された場合は年間利回り換算で0.14%~0.3%の負担になる見込みです

根拠は、2022年3月1日時点までの経済産業省の有識者会議の資料から試算しました。

2021年5月12日(第32回)の経済産業省の有識者会議から大きな進展はありません。

なお、2021年12月24日(第38回)の有識者会議で「発電側課金」は、制度の導入の要否も含めて見直すことになりました。

つまり、発電側課金そのものが導入されないことも想定されます

 

発電側課金(基本料金)とは?

太陽光発電を中心とするFIT制度(電力の固定価格買取制度)が開始されたことで、太陽光発電設備は急速に日本各地で作られました。

一方、その太陽光発電設備で発電された電力を各地で効率的に消費するための送配電網の整備が必要という課題が浮上しました。

そこで、電力小売り側のみで負担していた送配電網の整備費用を、電力発電側でも負担する制度が検討されることになりました。

最初は「発電側基本料金」という名称で発電設備の最大出力に対する固定基本料金制で検討されていました。

その後は、再エネを促進できる内容に改めて固定料金と従量料金を1:1に分けた「発電側課金」という名称で議論されています。

この発電側課金は、2023年4月から発電事業者に負担が求められる予定でした。

しかし、再エネ周辺環境の変化が目まぐるしく法整備も複雑なことなどから、2024年4月以降に延期されました。

具体的には、2021年12月24日の有識者会議で2022年度中に制度導入の要否も含めて結論を出すこを目途とされています。

 

インフラファンド(太陽光FIT)の利回りに与える影響は?

検討段階初期の「発電側基本料金」と「発電側課金」で負担割合の違いを比較してみました。

最初の「発電側基本料金」の負担は大きなものでしたが、現状の「発電側課金」はかなり軽減された結果になっています。

 

発電側基本料金

検討初期の「発電側基本料金」では最大出力KWに対して課金する内容でした。

月150円/KWとし、年間1,800円/KWという内容でした。

対象となるは、FIT認定を受けた太陽光発電事業者のうち、2015年6月以前に認定を受けたFIT価格27円/KW以上の発電設備です。

「利潤配慮期間」のFIT認定物件と言われています。

この「発電側基本料金」の負担額を利回り換算にすると、利回り換算で1%も減少することになります。

インフラファンドを例にすると利回りが6.5%のものが5.5%になるという結果です。

インフラファンドに限らず、借入をして太陽光発電事業者も同様です。

発電事業の継続が困難になる事業者も出るような内容です。

また、FIT制度とは国が保証した法律制度であり、その法律に遡って負担を強いることは「法の不遡及」の原則にも逆らいます。

経済産業省の有識者会議でも「法の不遡及」に関する発言があり認識はされているところです。

このような経緯などもあってか、より現状に即した発電側課金へと議論は進展しました。

 

発電側課金

現状は、発電事業者の意見なども踏まえて有識者会議の議論も深まり「発電側課金」として検討されています。

次の資料は、経済産業省・資源エネルギー庁の「発電側課金の調整措置について(2021年5月12日)」の29ページの抜粋です。

現状の「発電側課金」の考えが分かりやすく表現されている部分です。

 

発電側課金の調整措置について|資源エネルギー庁(2021年5月12日)

一番左りの棒グラフが太陽光発電になります。

現状での負担の総額は1kWhあたり0.97円が負担の総額です。(固定料金・従量料金とも含む負担総額です。)

水色の部分は発電側課金として負担が生じる費用を小売り価格に転嫁できる割合を示しています。

つまり、残る緑色の部分が事業者が実際に負担する可能性のある部分です。

太陽光発電と風力のみに負担が生じる結果となっています。

素案では緑色の負担をどうするかに関して、A)B)C)の3つの案が上げられています。

 

A)全額を再エネ賦課金で調整(太陽光事業者の負担は生じない。)

B)負担の一部(0.25円/kwh)を再エネ賦課金で調整し、残りを再エネ発電事業者が負担する。

c)全額を再エネ発電事業者が負担する。

 

有識者会議の出席者の多くはB)に賛成される方が多かったようです。

B)で仮定すると、発電事業者で負担が生じるのは「利潤配慮期間の太陽光発電事業者」のみなります。

小売り事業者に価格転嫁ができない太陽光発電事業者のみの負担が増えて不公平な制度になります。

(遠回しに「法の不遡及」の原則に逆らうような制度が適用されるような形です。)

この点、審議会では訴訟リスクが生じるという意見や、かえって複雑な事務費用が増加して本末転倒になるという意見などがあったようです。

 

個人的には、様々なリスクや労力を発生させるより、今ある制度の再エネ賦課金などでシンプルに調整した方がベストではと思います。

 

インフラファンドの利回りに与える影響の試算結果

それでは、現状の案に基づいて発電側課金で実際に負担が発生する場合の試算をしてみます。

インフラファンドは、2015年6月以前に認定を受けたFIT価格27円/KW以上の発電設備で構成されています。

したがって、経済産業省の資料にある費用が発生する場合のB案またはC案が当てはまります。

(再エネ賦課金で全額調整する場合は費用は発生しません。)

 

今回はいくつかあるインフラファンドの中からタカラレーベンインフラファンド投資法人を例に計算します。

下表はタカラレーベンインフラファンド投資法人の2020年12月から2021年11月の1年間の決算内容です。

実績発電量155,013,000 KWh
発行済投資口数220,605 口
年間分配金7,154円/1口

 

B案の一部を負担する案では、発電側課金は1kwhあたり約0.22円になります。

発電側課金料金は、0.22円×155,013,000kwh=34,102,860円になります。

これを投資口数で割ると、34,102,860円÷220,605口=154円です。

1口あたり154円の負担額を年間分配金7,154円から差し引くと、7,000円になります。

 

C案の全部を負担する案では、発電側課金は1kwhあたり約0.47円です。

発電側課金料金は、0.47円×155,013,000kwh=72,856,110円になります。

これを投資口数で割ると、72,856,110円÷220,605口=330円です。

1口あたり330円の負担額を年間分配金7,154円から差し引くと、6,824円になります。

 

投資口価格を2022年3月1日終値109,400円として利回りを比較すると下表のとおりです。

課金内容分配金利回り
発電側課金なし7,154円6.54%
発電側課金一部7,000円6.40%
発電側課金全部6,824円6.24%

表のとおり現状の議論では、利回りに対する影響は0.14%から0.3%が想定されます。

当初の発電側基本料金の案では、1口あたり年間分配金から1,000円程度(利回り1%程度)の負担が生じる案でした。

それと比べると負担割合はかなり削減された案になっています。

 

まとめ

昨年末から2022年はじめにかけてインフラファンドの投資口価格はやや軟調です。

2021年12月24日までは2023年4月から発電事業者の負担が始まると言われていました。

また、当初の発電側基本料金の素案では利回りが1%程度も下がるという情報が出回ったからかもしれません。

このような状況でもありましたので、今回は発電側の負担制度の検討内容をくわしく調べることにしました。

 

その結果、現時点での議論は最も負担の多い場合で利回りが約0.3%下がる程度ということが分かりました。

最悪を想定しても、最初の素案より影響はかなり軽減された内容になっていました。

また、この制度が導入される場合の開始時期も延期となり、早くても2024年4月以降になりました。

そのため、少なくとも2024年3月までの発電実績に対する分配金への直接的な影響はありません。

加えて、発電側課金そのものが採用されなくなり負担そのものがなくなる可能性も出てきました。

 

発電側課金の方針は導入の要否も含めて2022年度中に方針が決まる見込みです。

今後も注視はしておきたいと思います。

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