管理組合の役員の順番が回ってきた…。
めんどくさい。
やりたくない。
管理組合業務の実務を経験してきたマンション管理士が、この思いに回答します。
結論は、止むを得ない理由がある場合は、辞退そのものは可能です。
しかし、同じ建物の所有者のマナーとして、役員は引き受けるべきです。
役員を引き受ける理事会に同席することがありますが、ほとんどの方が引き受けられます。
つまり、辞退の申し出は他の所有者から良い目で見られることはありません。
役員がめんどくさいと思われているかもしれませんが、他の所有者の大多数は味方です。
同じ建物の所有者との関係を大切にして、がんばりましょう。
なお、マンション管理組合のことが良く分からない方は、記事を読み進める前にこちらをご覧ください。
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【 目 次 】
マンション管理会社に業務委託しているケース
管理組合の役員が「めんどくさい」と思われた方は、管理組合の業務が面倒なことを理解している点でむしろ適任です。
これくらいめんどくさい仕事がこの世にあるのかというくらい骨が折れる仕事です。
いってみれば、他人の世話、トラブルの仲裁、雑務の連続、縁の下の力持ちです。
そして、挙句の果てに文句を言われます。
ほとんどのマンションでは無償で役員を引き受けますので「やってられない。」という気持ちになる人もいます。
しかし、任期は1年か2年です。
自分が所有するマンションを理解するきっかけにもなります。
管理会社の力量の見分け方
管理組合の役員の負担が大きいかどうかは、サポートをする管理会社の力量によって異なります。
サポートがしっかりしていれば、ほとんど何もすることがないでしょう。
年に数回の理事会への出席と、年に1回の総会に出席して説明をする程度になると思われます。
あなたのマンションの管理会社はどうでしょうか?
管理会社には大きく分けて2種類があります。
デベロッパー系と独立系です。
デベロッパー系とは「製・販・管」一体で自社ブランドのマンションを展開しているグループ会社に属する管理会社です。
「製・販・管」が一体になっている点で仕事を規格化しやすいメリットがあります。
そして、最も重要な点がマンション担当者一人あたりの担当マンション数です。
マンション担当者の一人あたりのマンション担当数が10物件くらいであれば管理組合を十分にサポートできる可能性が高いです。
それから、管理会社の管理規模や担当者による違いがあります。
ブランド名があっても、マンション事業に参入した実績が浅いデベロッパー系もあります。
実績が浅く規模が小さいと社内の分業化が進んでおらず、ノウハウもなく期待を裏切られかねません。
また、マンション担当者の担当マンション数が少なくても、役員に仕事を積極的に投げてくる担当者が存在します。
おかしいと思われたら、マンション担当者の所属する管理会社の上席に確認しましょう。
それでも改善されない場合はあまり期待できません。
管理組合の総会決議で、管理会社を変更することも一つの手段です。
続いては、独立系の管理会社です。
独立系の管理会社は管理委託料の安さを武器にして管理組合から仕事を直接に受注する会社です。
いろいろなデベロッパーのブランドのマンションを扱うため、社内業務を規格化することが難しい側面があります。
また、マンション担当者の一人あたりのマンション担当数が15~20物件くらいのところが多いです。
20物件にもなると管理組合のサポートはほとんど出来なくなるといって良いでしょう。
これは管理会社が悪いというより、管理委託料の安さと引き換えに管理組合の仕事を増やしたという一面があります。
解決するには管理会社を変更する時に、どこまで管理組合業務をサポートするかを明確にしておく必要があります。
管理会社を変更する時は独立系の管理会社にしなくてはならないルールはありません。
近年では、管理規模も大きく歴史のあるデベロッパー系の管理会社でも、独立系と同じくらい管理委託料を安くして仕事を受けてもらえます。
管理会社との関係のまとめ
管理会社の種類とマンション担当者の力量によるサポート体制の違いを説明してきました。
より分かりやすくするために、管理会社の業務サポートが完璧に近い場合の具体例を挙げてみます。
管理会社のサポートが完璧に近いと、最も仕事量の多い理事長の場合でも、その仕事は管理会社の作成した資料をチェックするだけになります。
例えば、各業者への支払いが管理組合の予算内かを確認する「支払承認書」という書類に「理事長の印」という印鑑で捺印または、スマホ等の電子的方法で決裁する仕事があります。
また、行政への届出資料の作成のために、建築設備定期検査、エレベーター定期検査報告書、消防設備点検報告書等に「理事長の印」を捺印することなどもあります。
報告書の行政への提出は管理会社が代行し、受付印をもらった後に報告があるはずです。
その他に、居住者からの相談等を管理会社経由で聞くこともあります。
管理会社で積極的に相談を受けて、問題解決の提案もしてくるはずです。
管理組合の役員に相談内容をそのまま投げてくるようではサポートとは言えません。
相談内容が簡単でない場合は、管理会社の解決案をたたき台にして、理事会で他の役員に相談することも出来ます。
最も仕事量の多い理事長でも、最低限の仕事はこのくらいです。
このような場合は、管理組合の役員をしている期間は心配ごとが増えますが、実務上は暇なくらいに感じると思われます。
もちろん、管理会社任せにせず仕事を探して行動することに問題はなく、むしろ望まれます。
最後に、注意しなくてはいけない点は、管理会社が全てやっていると思いこんではいけないということです。
信じられないかもしれませんが、管理組合が理解していないことを良いことに業務をしていないこともあります。
そして、管理組合の業務が遂行されていないことを知らせてこないかもしれません。
このような悪質な管理会社は、何かあった場合に「業務外です。管理組合の業務です。」と逃げるかもしれません。
そこで、そうなる前に理事長や理事会に報告が出来ているか確認しなくてはいけません。
良い管理会社の担当者であれば、管理組合に小まめに電子メールで連絡を取る、緊急時や繊細な問題は理事長に電話連絡を取るという行動を起こしているでしょう。
これはあくまで「管理会社のサポートが完璧に近い。」場合の例です。
管理会社の業務範囲は「管理委契約書」に記載があります。
契約書は抽象的な記載もありますので、細かな部分は管理会社と対話するなどして、業務内容を把握しておいた方が良いかもしれません。
その他に、マンション管理組合の業務を知る方法として、過去の総会資料で確認ができます。
総会資料には1年の仕事内容を記録する業務報告が義務になっているからです。
さらに詳しく知るには、理事会の議事録を閲覧する方法等もあります。
マンション管理組合で自主管理しているケース
ごく少数ですが、マンション管理会社に頼らずに、所有者のみで管理組合の運営をしているマンションがあります。
簡単に言うと、管理組合の業務を委託している管理会社が存在しない場合です。
住戸数が少ないマンションであったり、定年退職して時間のある所有者が管理組合の役員を長らく務めている場合などです。
また、管理会社に会計事務のみ業務委託していて、それ以外は所有者で自主管理しているマンションがあります。
これらのケースに当てはまっていると管理会社に期待できることはありません。
ひとつひとつ自分たちでやることになりますので、役員の負担は相当なものに感じられるかもしれません。
ただし、自主管理にしている以上、仕事量が分散されるように役員の数を増やしていると思います。
あるいは、引継ぎ期間を十分とれるように役員を総入替えにせず、半数改選としているのではないでしょうか?
このように対策済みである場合は、仕事量はそれなりにあっても助け合って解決が出来ると思います。
周りの役員の方々も味方ですので、力を合わせてサポートをしてくれると思います。
はじめて役員をされる方はひとつずつ業務をこなすだけになるかもしれません。
それでも、自分の所有するマンションを知る良いきっかけになるはずです。
まとめ
「マンション管理組合の役員はやりたくない。めんどうだなぁ。」とは誰しもが感じることだと思います。
私の場合は、管理会社が存在するマンションばかりでしたが、多くのマンションを見てきました。
そして、管理組合の役員を引き受ける理事会に何度も同席してきました。
役割分担を決める集まりでは9割8分以上の方は快く役員を引き受けておられました。
皆が譲り合って時間が過ぎはじめたころ「理事長をやってもいいよ。」という方に出会うたびに感心しました。
逆に、役員を辞退しようとしたり、役割分担で負担の少ない役を選ぼうとする場面も見かけることもありました。
本当にやむを得ない場合は仕方がありませんが、同じ立場の他の所有者の方は注意深く言動を見ています。
得手不得手はあると思いますが、出来得るかぎり前向きに協力されることをおすすめします。