地震でも倒壊しないマンションの形や階数を見分るにはどうすれば良いのか?
地震に強いマンション選びは、まず新耐震基準に適合している建物を選ぶことです。
また、一般的に地震に強いマンションは正方形などの単純な形や構造で、階数は中高層階の方が安全性が高いと言われています。
これらの理由と見分け方をマンション管理士が簡潔にご案内させていただきます。
【 目 次 】
震度6強7レベルの地震が来ても倒壊しないマンション
地震に強い建物を見分ける最も分かりやすい方法は「新耐震基準」に適合しているか否かです。
1995年1月17日に発生した阪神淡路大震災のデータを見ると、この基準が生きていることが分かります。
項目 | 新耐震基準 | 旧耐震基準 |
大破以上 | 10%弱 | 30%弱 |
中・小破 | 20%弱 | 40%弱 |
軽微または被害なし | 70%強 | 30%弱 |
(引用:平成7年阪神淡路大震災建築震災調査委員会中間報告)
新耐震基準とは「震度5強程度の地震で損傷がほとんどなく、極めて稀にしか発生しない震度6強から震度7程度の地震でも人命にかかわるような倒壊等の被害を生じない。」よう設計基準が設けられています。
「新耐震基準」は、1981年6月1日以降に建築確認を受けた建物が適合します。
また、建築確認後から実際に建物が販売されるまで1年から2年程度かかります。
そのため1981年に竣工した建物でも「新耐震基準」に適合していない場合がありますので注意が必要です。
なお、1981年以前の建物でも耐震補強の工事をすることで「新耐震基準」に適合している建物も少ないですが存在します。
余談ですが、東京都では新耐震適合表示制度を設けています。
新耐震基準に適合している建物の管理者が申し込むと無料でもらえます。
また、新耐震基準より後の法律で「耐震等級」という基準もできました。
2000年4月1日に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に沿った住宅性能表示制度です。
耐震等級1から耐震等級3まであり、等級3が最も地震に強いです。
等級 | 求められる耐震能力 | 代表的な建物 |
耐震等級1 | 新耐震基準と同程度の建物 | 一般住宅 |
耐震等級2 | 等級1で想定する地震の1.25倍の力に耐えられる | 学校・病院 |
耐震等級3 | 等級1で想定する地震の1.5倍の力に耐えられる | 警察署・消防署 |
マンションの場合は間取り等の自由度を確保する観点から、耐震等級1のものが多いです。
耐震等級1でもかなりの性能といえます。
まとめると、1981年6月1日以降に建築確認を受けたマンションの場合は、地震による倒壊の心配は少ないです。
地震に強いマンションの形と階数
ここまでの説明で「新耐震基準」に適合している建物は、大地震が来ても倒壊や崩壊する事は少ないことが分かりました。
しかし、阪神淡路大震災では「新耐震基準」の建物でも倒壊した建物がありました。
そして「新耐震基準」の建物でも倒壊した部分の多くは1階です。
建物が倒壊した勢いで2階も危ういため、3階以上を住まいにするのが良いと思われます。
3階以上になると津波、洪水の水害対策にもなります。
さて、重要なのは新耐震基準でも倒壊した建物の主な倒壊原因です。
専門化の意見では建物の形が原因という考えが多数を占めています。
結論は、地震に強いマンションの形は正方形等の単純な形、また、低層階から上層階まで単純な構造である方が良いです。
上図は地震に弱いマンションの形の1例です。
1階の敷地を駐車場として有効活用するべく1階の構造のみ耐力壁がなく柱のみです。
専門用語でこのような1階部分の形状を「ピロティ」といいます。
なんだか面白い名前です。
フランス語で「杭」という意味だそうです。
ピロティの構造の場合は、1階部分を柱のみで地震に耐えなければならず、阪神淡路大震災で耐震性の弱さが見受けられました。
建物の重さがのしかかる1階部分は柱のみとせず、耐力壁の量とバランスが耐震性能に重要です。
同じようなマンションの構造として、1階部分が店舗のマンションもよく見かけるところです。
この場合も壁が少なく窓ガラスが多い場合は、柱だけのピロティと同様です。
店舗の中も人が歩き回りやすくするために構造的な壁を少なくしているところも多いと思われます。
また、壁に関してどのような壁でも地震に強いわけではありません。
部屋を仕切るだけの「間仕切り壁」はパーテーションボードや、石膏ボードで作成されたもので簡単に破壊されます。
構造的な壁とは鉄筋コンクリート等で作られたしっかりした壁です。
このような壁が1階にバランスよくなくてはなりません。
例えば、東側と南側だけ立派な柱と耐力壁があるけれども、その他の方向は柱しかないという建物もバランスが悪く、地震に弱いといわれています。
また、1階に壁があっても上図のように上層階と下層階で形や構造が異なる建物は、上層と下層の接合部分に地震の力がかかって、損傷しやすくなります。
ここまでは、建物を横から見た立面図(りつめんず)で説明しました。
続いては、建物を上から見た俯瞰図(ふかんず)で地震に弱い建物の形を説明します。
左の建物からコの字型、L字型、建物をずらしたような雁行型などです。
このような形の建物で「構造的に一体化」している場合は、地震の力の逃げ場所がなくなる接合部分に大きな被害が発生します。
しかし、下図のような場合はどうでしょうか。
先程と形は同じですが、建物が一体となっておらず空間があります。
このような場合は、建物が別方向にそれぞれ揺れたとしても互いに影響せず大きな被害を受けません。
新耐震基準の建物の多くはこの空間を、エキスパンションジョイント(伸縮継ぎ手)でつないでいます。
例えば、共用廊下部分で建物同士が30cmくらい離れている場合でも、人が歩けるように空間上にアルミパネルを床に敷いてある場所です。
このエキスパンションジョイントによって見た目には建物同士がつながっているように見えます。
しかし、大地震の際に建物同士が影響しないようにエキスパンションジョイントを「あえて壊れやすく」していたり、可動するようしたりしています。
熊本地震ではこのエキスパンションジョイント部分が破壊し、真っ二つに割れたような建物がありました。
一部のマスコミが「マンションが真っ二つに割れています。」と騒いでいましたが、地震発生時の安全面はともかく、耐震設計の上で正しく壊れています。
今後「コの字」や「L字」等になっているマンションを見学する時は、不動産会社等にエキスパンションジョイントで建物同士が構造上は別棟になっているかを確認すると良いと思います。
まとめ
マンションの耐震性能を見る第一の基準は「新耐震基準」に適合しているか否かでした。
また、デザイン性に劣るかもしれませんが、建物の形や構造は単純なものが良いことがわかりました。
その他、複雑な構造に見えても「エキスパンションジョイント」で地震に対する設計がされている場合があることもわかりました。
これらの基準を満たすマンションにお住まいの場合は、大地震でも基本的に倒壊しないと考えて居室内を避難場所にする方が良いと思われます。
大地震が起きた際にこのような基準の建物であっても1階に避難しようとされる方がお見えです。
しかし、余震等で高層階からガラスやタイルが落下してくる危険性があります。
火災等の2次被害が発生していない場合は、しばらく居室内で待機した方が良いかもしれません。
その場合は居室内に防災備品の備え付けや、家具の転倒防止などの備えも必要になります。
以上が地震に強いマンションの簡単な見分け方になります。
ご参考になれば幸いです。