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インヴィンシブル投資法人(8963)分配金(配当)【大幅減配】

2020年5月12日

インヴィシブル投資法人の減配(60分の1)

インヴィンシブル投資法人(8963)の2020 年6月期(自2020年1月1日至2020 年6月30日)の運用状況及び分配金の予想修正のIR発表が、2020年5月11日に公開されました。

2020年6月期の分配金予想は、30円で前回予想の1,812円から60分の1という大幅な減配予想になりました。

世界各国の移動制限等により2020年3月頃から「減配は免れない。」という予想は多く見受けられたことでもあり、市場はある程度は織り込んではいたものの株価は下落しました。

IR発表の翌日の株価は寄り付き後に反発しましたが後場からは下落基調となりました。

市場が引けるまでストップ安に張り付くことまではありませんでしたが、終値はストップ安の値段で終了しています。

今回のIRの発表内容と今後を考えてみたいと思います。

インヴィンシブル投資法人のIR発表での稼働率予想(2020年5月11日)

下図はIRの内容に基づく国内ホテル75物件の稼働率のグラフです。

インヴィンシブル投資法人が2020年4月末時点で保有する国内ホテル84物件から固定賃料の9物件を除いた数値との説明があります。

なお、2020年4月以降の稼働率は「予測数値」と但し書きがあります。

インヴィシブル投資法人のホテル稼働率のグラフ

国内の観光が9割以上の減少していると報道もある現状、予想通り4月以降も20%をキープ出来るかは定かではありません。

また、国内のホテルのうち、13物件の営業を休止しているという発表もありました。

一定範囲に保有するホテルが複数ある場合は、1物件のみに集約して他のホテルを休止しているそうです。

 

続いては、海外ホテルの2物件の稼働率のグラフです。

2物件のみですが2019年12月期の実績で営業収益の8.4%を占めています。

インヴィシブル投資法人のホテル稼働率のグラフ(海外物件)

2020年4月からの稼働率が0%になっています。

理由はケイマン諸島政府が2020年3月23日から5月31日までオーウェンロバーツ国際空港を閉鎖すると発表したためです。

この発表により「ウェスティン・グランドケイマン・セブンマイルビーチ・リゾート&スパ」と「サンシャイン・スイーツ・リゾート」 のケイマンホテル2物件は営業を停止しています。

営業再開日は7月1日を予定とされていますが、今後の状況により定かではありません。

なお、同投資法人は、国内と国外のホテルのポートフォリオ以外に住宅物件を保有しており、2019年12月期の実績として約23億円(14%)の営業収益があります。

こちらの稼働率は例年どおりの順調に推移をしているとの発表でした。

インヴィンシブル投資法人のIRに見る対応の概要(2020年5月11日)

今期と来期は全く先行きが見えない状況となった今日、インヴィンシブル投資法人としては「生き残る道」を選択する事が最善と判断したようです。

具体的には、同投資法人が保有するホテルのテナントあたる資産運用会社の㈱マイステイズ・ホテル・マネジメント(MHM)を救済するというものです。

今回の発表は、2020年6月末日までの暫定措置とされています。

おそらくは、渡航制限等の問題が解消に向かうまでこの措置が継続されるものと推察されます。

発表内容の詳細は、MHMが運営する73物件に関して、同投資法人とMHMが締結している契約に、新たな覚書を締結するというものです。

概要は次のとおりです。

1⃣ MHMに対して固定賃料の支払いの免除、および、変動賃料の計算方法の変更を行う。

●2020年3月1日から6月30日までの固定賃料を免除する。

●2020年2月1日から6月30日までの変動賃料は月間GOPと同額、または、GOPがマイナスの場合は0円とする。

*GOPとは営業粗利益(Gross Operating Profit)の略、テナントのホテル売上から営業にかかわる費用と、オペレーターへの管理委託料等を控除した後の手残りの金額です。

2⃣ MHMが負担するべきホテルの設備維持管理費(人件費、一般管理費等を除く。)を同投資法人が負担する。

3⃣ 同投資法人がMHMに支払う管理手数料をMHMの存続に必要な金額とし、15億円を上限に増額する。

要約すると、インヴィンシブル投資法人はMHMの固定賃料の免除に加えて、営業粗利益が出ない場合の変動賃料も全額免除とするだけでなく、MHMの営業赤字を解消するためにMHMが負担すべき維持管理費の一部を負担し、さらに、MHMに支払う管理料も増額するという全面的支援を行う内容です。

出来得る限りMHMを救済し、共存と生き残りを図るようです。

また、2020年3月1日から6月末日の4か月でMHMグループとしては50億円(固定賃料約35億円、管理手数料15億円)の資金手当てが必要との試算があるようです。

もし、支援を実行しなかった場合は、2020年5月内にMHMグループが倒産する恐れがあるという理由も述べられています。

また、同投資法人のスポンサーであるFIG(Fortress Investment Group)も支援として、総額13億の追加出資(7億は実行済み)予定としています。

ただし、FIGとしては以降の出資はできない見込みのようです。

これらを総合して検討した結果、2020年6月期の分配金予想を30円としたというものです。

インヴィンシブル投資法人の減配予想から見る今後

同投資法人のIRの内容を読んで感じたことは、ホテル業界の今後の倒産は現在よりも連鎖的に発生するのではないかという心配です。

それにしても同投資法人の「救い」は全ポートフォリオの中に営業収益約23億円(14%)のホテル以外の「住宅」のポートフォリオを保有していた点だと思います。

同投資法人は最近まで収益率の高いホテルに力を入れて来たようですが、このような事態を目の当たりにすると分散投資の重要さを改めて認識させられます。

また、同投資法人のIRでは住宅ポートフォリオと内部留保127億円がある点に触れて、今後の運営に問題が少ないようなニュアンスの表現もありましたが、今の状況では安心までは出来ないと思います。

投資家サイドとしては、内部留保を取り崩すことのないよう、ホテルの稼働率をせめて20%を割り込まない程度は維持してもらいたいと考えるのではないでしょうか。

今回のIRを見たところ、個人的には同投資法人は1年から2年程度であれば低空飛行でしのげるように思います。

むしろ、気になった点は他のホテル系REITです。

ホテル系REITの中にはポートフォリオが100%ホテルというREITが存在しています。

該当する投資法人は一体どういう措置をとることが出来るのでしょうか。

ポートフォリオの100%がホテルの投資法人の株価(投資口価格)は、2020年5月11日のインヴィンシブル投資法人の株価につれて下がってはいました。

しかし、同投資法人より深刻な下げは見られませんでした。

今後に注目したいと思います。

まとめ

REITの投資対象は「住宅」「物流」「ヘルスケア」「オフィス」「商業施設」「ホテル」等があります。

もともと景気に左右されやすいとされているのは「オフィス」「商業施設」「ホテル」です。

中でももっとも影響を受けるのは、旅行等の娯楽を含む「ホテル」ではないでしょうか。

しかし、今回は景気の影響という想定をはるかに超える事態になりました。

世界各国は、経済活動の再開に向けて動きつつありますし、動かざるを得ないと思います。

そして、経済の回復が徐々に進展することを期待しますが、すぐに回復とはいかないでしょう。

同投資法人の2020年6月期の分配金予想は30円でしたが、12月期(2020年7月1日から2020年12月31日)の分配金は未定という発表もありました。

2020年12月期の分配金はなくなるかもしれませんが、再び市場に活況が戻ることが望まれます。

 

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