オートサーバー(5589)は「ASNET」という中古車オークションのプラットフォームの運営会社です。
国内の中古車オークションに掲載される95%の情報をカバーしています。
収益構造は2つの柱があります。
プラットフォームを利用してもらう「オークション代行事業」では中古車の落札時に買主からの手数料が収益となります。
売買の仲介までフォローする「ASワンプラス」では取引が成立した時に買主と売主双方からの手数料が収益になります。
まとめると、提供するプラットフォーム自体は基本的に無料で、中古車の取引数に応じて2つの柱で収益が上がる構造です。
国内事業が主で、急成長する段階は終えて安定収益を継続している段階と思います。
具体的には、2018年以降の1株あたり利益(EPS)は180円を下回ることなく2024年12月期は220円で最高値でした。
収益は安定的で業績は底堅いと思われます。
成長性については、現状では過度に期待できそうにありません。
可能性としては、利益率の高い「ASワンプラス(仲介)」を伸す余地があかもしれません。
あるいは、海外事業では過去に中国で失敗していますが、他国で成功するかもしれません。
なお、同業他社はオークネット(3964)が運営するアイオークが該当するそうです。
ユー・エス・エス(4732)は、オートサーバー(5589)にデータ提供をしていて、競合というより大きい仕事をもらっている関係のようです。
【 目 次 】
オートサーバー(5589)の配当
オートサーバー(5589)の配当権利月は12月一括です。
配当性向は30%で設定されています。
決算年月 | 配当額 |
2021年12月期 | 62.5円 |
2022年12月期 | 55円 |
2023年12月期 | 61円 |
2024年12月期 | 66円 |
*過去の実績では概ね1株60円前後の配当が安定的に実施されています。
また、貸借対照表の「現金および預金」が120億ほどありますが、中古車売買の費用を立替えて支払うことがあるそうです。
そのため、70億円程度は手元に現金として必要だそうです。
余る50億円ほどは設備投資やM&Aや株主還元に使われていくと思われます。
なお、東証の求める「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」については、2025年2月28日時点で「検討中」となっています。
この先の対策が未だあるかもしれません。
オートサーバー(5589)の株主優待
オートサーバー(5589)の株主優待は2025年3月14日IRで新設されました。
株主優待の権利月は6月です。
株主優待の獲得条件は少し変わった内容です。
初回の2025年6月基準日では、100株以上の株主にQUOカード10,000円分が進呈されます。
ただし、翌2026年6月基準日以降は100株以上の株主に進呈されるQUOカードが5,000円に減額されます。
その代わり、翌2026年6月基準日時点で200株以上の株主、かつ、2025年6月基準日から100株以上の株式を1年以上継続して保有している株主には、新たにQUOカード15,000円が進呈されます。
この変則的な株主優待の内容は、他社が高額クオカードを設定後、株主が急増して優待改悪等につながった失敗事例を学習した結果、なるべく優待改悪にならないように先手を打っているとも思えます。
さて、変則的な条件ということもあり、株式の購入するタイミングも人それぞれ変わると思います。
たとえば、1年目の2025年6月基準日は100株にして優待利回り4.4%を得た後、権利落ち日の株価が優待価格分の100円以上の下げ幅で100株を追加、それより価格が高ければ売却というケースもあると思います。
あまり考えずに、2025年6月基準日までに200株を3月28日の終値で買っても1年目の総合利回り5.1%ですので、継続保有で2年目からは総合利回り6.3%で良しとするケースなど。(1株配当66円が維持される前提)
わたしはとりあえず、100株で購入しました。
(2025年3月14日現在)
株主優待(6月)/保有期間 | |||
保有株数 | 2025年6月【初回限定】 | 2026年6月以降(1年未満) | 2026年6月以降(1年以上) |
100株以上 | QUOカード10,000円分(総合利回り7.4%) | QUOカード5,000円分(総合利回り5.2%) | |
200株以上 | QUOカード10,000円分(総合利回り5.2%) | QUOカード5,000円分(総合利回り4.0%) | QUOカード15,000円分(総合利回り6.3%) |
(注1)総合利回りは1株あたりの株主優待価格に毎年12月一括の1株配当66円(予定)を加算して計算しています。
(注2)総合利回り(四捨五入)は2025年3月28日の終値2,252円で計算しています。
(注3)総合利回りは各優待獲得条件の下限の保有株数(100株、200株)で計算しています。
計算例 : (優待価格÷株数+1株配当66円)÷2252円
高額クオカードの株主優待【改悪や廃止に要注意】
2023年から株主優待に高額クオカードを新設する企業が増えています。
中長期で保有する場合は、業績や財務を見ておく必要があると思います。
たとえば、REVOLUTION(8894)は2025年3月11日に高額クオカードの株主優待を一度も実施せずに廃止しました。
REVOLUTION(8894)の業績は毎年のように赤字続きで負債はあっても利益剰余金もありませんでした。
このような企業が株主優待を継続できるのかという点で、最初からリスクしか見えませんでした。
他にも高額クオカードを改悪した企業として、ビジョン(9416)やセグエグループ(3968)などがあります。
これらの企業も高額クオカードを新設して2ヶ月後、1年後に改悪しています。
特に、余裕のなさそうな企業の株主優待は、高額クオカードに限らず注意が必要だと思います。
オートサーバー(5589)の高額クオカード優待は継続?
オートサーバー(5589)の株主優待が継続されるかどうかが気になると思います。
株主優待にかかる費用や業績や財務を見ていく必要があると思います。
そこで、以下のとおりオートサーバー(5589)の現状をまとめました。
なお、株式数等のデータは主に2024年12月31日時点のものを用いて計算しています。
オートサーバー(5589)の株主構成のチェック
オートサーバー(5589)の株主構成は下表のとおりです。
(2024年12月31日現在)
区分 | 株式の状況 | 単元未満株式の状況 | |||||||
政府及び地方公共団体 | 金融機関 | 金融商品取引業者 | その他の法人 | 外国法人等 | 個人その他 | 計 | |||
個人以外 | 個人 | ||||||||
株主数(人) | - | 3 | 16 | 63 | 18 | 6 | 3,074 | 3,180 | - |
所有株式数(株) | - | 178,200 | 87,800 | 5,320,300 | 228,100 | 1,600 | 1,328,600 | 7,144,600 | 1,300 |
所有株式数の割合(%) | - | 2.49 | 1.23 | 74.47 | 3.19 | 0.02 | 18.60 | 100 | - |
株主優待の対象となるのは主に太字で表した「個人株主」になります。
たとえば、朝日ホールディングスは大株主で4,530,600株と株式を大量に保有しています。
しかし、株主優待は200株だけ保有している個人株主と同じ内容です。
そこで、およその数字の把握する点で個人株主にフォーカスして計算ししました。
さて、上表の個人株主の株式数を見ると1,328,600株になります。
また、200株のみ1年以上保有する株主が1年後に優待利回りが最大になります。
経費が最大にかかるのも、おそらく個人株主が200株だけ保有した場合かと思われます。
経費が最大になる人数は「1,328,600株÷200株=6,643人」になります。
全員200株で保有することはあり得ませんが安全を見て最大に経費がかかるとして計算すると「15,000円×6,643株主=99,645,000円」になります。
これに優待発送費用等の経費を5千万円程度とすると全ての費用は1億5千万円です。
1株あたりの費用の合計は約21円です。
オートサーバー(5589)の1株あたりの利益は概ね200円前後で安定的に推移しています。
1株利益(EPS)200円-1株配当66円-1株優待経費計21円=113円になります。
つまり、優待費用を現状で最大に見ても利益の半分以上が残ります。
見方を変えて1株配当と1株優待を足した87円を1株配当に見立てると配当性向43%程度です。
(初年度の100株のみ保有する株主の費用や、100株のみ保有する株主が増える方が優待発送コストが増える点など細かい点は省いてますが、保守的に見た数字で大きくは外れないと思っています)
参考(他社との比較)
セグエグループ(3968)の場合は2024年2月13日に株式3分割とクオカード年3万円の優待新設を同時に発表しました。
その後10ヵ月ほどで個人の株主人数は約4倍に増加し、個人株主の保有株式数は約1.24倍(株式3分割の影響除く)に増加しています。
そして、優待新設から1年後の2025年2月13日に株主優待は改悪されました。
内容は、1,000株以上保有で年3万円のクオカードを年1万円(半年以上保有の場合は2万円)にするというものです。
2024年12月期決算は年3万円の優待費用を払って約5億円の黒字でしたが、そこから配当を支払うと手残りは1億4千万円程でした。
優待を継続していくことは最初からかなり厳しい状況だったと思います。
他に、ビジョン(9416)は以前から実施していた自社製品の優待等を残し、300株以上保有で年3万円のクオカード(デジタルギフト)は1回限りで廃止しました。
ビジョン(9416)に先ほどと同じ計算を当てはめると1株利益のうち72%を優待費用が占める結果なりました。
1株利益の30%程度の利益が残るので継続できそうにも思えますが、同社のIRによると、クオカードの優待を設定後2ヵ月ほどで株主数が3倍近くに増え、想定の倍以上に営業利益を圧迫、成長性が低下するため廃止したようです。
個人的には、高額クオカードの株主優待を継続するだけなら出来たと思います。
代わりに配当は若干増額されていますので、成長性と公平性のある配当を重視したように思われます。(他に何らかの理由があるかもしれませんが…)
オートサーバー(5589)の大株主が売り出すリスク
先程は、現状の個人株主にフォーカスして経費を最大化して計算をしました。
さらなる懸念として大株主が大量に株式を売り出すことで100株、200株を保有する個人株主が増えないのかという点です。
筆頭株主で4,530,600株(63.4%)を保有する朝日ホールディングス)は、オートサーバー(5589)の萩原外志仁会長の資産管理会社です。
IPO後には150万株ほど売却しており、今後も何らかの理由で売り出す可能性はないと言えません。
仮に全部売却されて4,530,600株の全てが200株保有の個人株主になった場合で22,653人の増加になります。
既存株主の最大値6,643人と合わせて29,296人です。
クオカード15,000円×29,296人=439,440,000円に優待発送費用等を加えて5億円とすると1株あたり約70円です。
1株配当66円を足しても136円ほどで、毎年の1株利益のおよその平均200円を超えません。
他に光通信などの大株主が存在しますが、それら全ての大株主が売却した場合を想定します。
発行済株式7,144,600株の全てが200株保有の個人株主になった場合の人数は35,723人です。
クオカード15,000円×35,723人=535,845,000円に優待発送費用等を加えて6億円とすると1株あたり84円くらいです。
1株配当66円を足しても150円ほどで、1株利益のおおむね200円を超えません。
ただ、1株利益の占める割合は75%とビジョンが株主優待を改悪したラインをわずかに超えます。
この想定が自体が極端で、実際に大株主が一斉に売り出すとのかという疑問も残りますが、現実化しても利益は積みあがる状態です。
最終的な判断は、オートサーバー(5589)次第といったところでしょうか。
発行済み株式の増加のリスク
公募増資等による新株発行で発行済株式が増加えるリスクもあります。
新たな株式が発行されると、200株を保有する個人株主が増える可能性があります。
この点は株主優待を設定した企業がある程度のコントロールができる部分になると思います。
IPO後に公募価格を下回り続けている状況で、そのようなことがすぐにできるのでしょうか?
これも「ない」とは言い切れません。
その他のリスク
株主優待は長期で見ると廃止されて配当に集約されることも良く見かけます。
オリックス(8591)やJT(2914)などの大企業も個人株主が増え続けた結果、株主優待を廃止しました。
私が「株主優待目的」だけで株式を積極的に購入しない理由の一つです。
さて、オートサーバー(5589)の株主優待を廃止・改悪はあるかないのか。
仮に廃止になっても配当利回りだけで約3%です。
あるいは、安定的に成長して株主優待を廃止後もJT(2914)のように配当性向75%程にして配当利回りが良い企業になるかもしれません。
ちなみに、オートサーバー(5589)の2023年12月期実績値(1株利益199.44円)で株主優待を廃止し、配当性向を30%から70%にすると1株139円配当になります。
高額株主優待と同程度の利回りを保てます。
(今回の株主優待は大株主へのコストがかからないので、1株配当66円+現在の個人株主の最大コスト1株21=1株87円、配当性向で言うと43%に抑えつつ、個人投資家に対する利回りだけ急上昇させたとも言えます)
ただ、実際にオートサーバー(5589)が配当に集約する場合に配当性向はどこまで上げられるかは分かりません。
配当性向を高くして配当に集約されたらリスクは低くなります。
しかし、ビジョン(9416)ように企業側の都合で改悪と言える内容で配当に集約される可能性もあります。
ビジョン(9416)の場合は優待廃止し、配当性向30%~40%を「2年間」は配当性向50%にする措置がとられています。
まとめ
2023年以降、高額クオカードの株主優待が流行っていますが、わたしは積極的に購入していません。
そのような銘柄は気づいたら株価が上がっていたか、胡散臭い銘柄が結構あるなと思ったからです。
また、株主優待が高額だと廃止された場合のリスクも大きいとと思いますし、予期せぬ何かがあるのかもしれん。
先に高額クオカードの改悪事例をあげましたが、他にも保有期間条件を追加するマイルドな改悪も発生しています。(投資判断は自己責任でお願いします)
さて、オートサーバー(5589)に関してですが、私は2,246円で100株を購入しました。
高額クオカードを株主優待に設定している企業の中で、利回りが良くある程度は優待を継続できそうな企業と思ったからです。
また、100株を2025年6月基準日までに購入しておくことで、基準日以降の株価に合わせてキャピタルゲインと総合利回り6%以上のいずれかを狙えると思いました。
言い換えると、株価が大きく下がったら買い増し、株価が上がったら全株売却で利益確定できる選択です。
オートサーバー(5589)は自分なりに調べたし、優待廃止でも配当3%でこの投資金額ならいいかなと割り切ってます。
なお、私は主に長期投資をしていますが、高額な株主優待を設けている銘柄にそれほど興味がありません。
経過にもよりますが、この種の銘柄は長期保有せず、短期または中期の取引になるかもしれません。