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一般口座と特定口座の違い(メリット・デメリット)

2020年4月26日

一般口座と特定口座を選ぶイメージ図

証券口座の口座種別の選択で迷われているのであれば特定口座(源泉徴収あり)」を選択しておくことが無難です。

ただ、手続きが煩雑になったり、操作が複雑になりますが特定口座(源泉徴収なし)と一般口座にも特有のメリットはあります。

この記事では、それぞれのメリットとデメリットを具体例を示して説明しています。

特定口座(源泉徴収あり・なし)と一般口座の違い

ここでは3種類の口座種別、特定口座(源泉徴収あり)、特定口座(源泉徴収なし)、一般口座の特徴を順番に説明していきます。

1⃣ 特定口座(源泉徴収あり)の特徴

一般的に、株式等で利益が発生した場合は、税金(20.315%)を納税するために所轄の税務署に確定申告を行う必要があります。

特定口座は、この確定申告の手続きをサポートしてもらえる点があります。

具体的には、証券会社が1年間の損益を計算して年間取引報告書として(電子)書面を作成してくれる点です。

次に、特定口座の中でも「源泉徴収あり」を選択すると、証券会社が株式の売買等のたびに源泉徴収して、年度末の確定申告を不要にしてくれます。

さらに、株式の売買等で譲渡損失が発生した場合に他の配当利益や譲渡利益と損益通算して源泉徴収額を調整してくれます。

このように特定口座(源泉徴収あり)を選択すると、売買の年間取引報告書の作成および、確定申告が不要になるメリットがあります。

また、所得税の確定申告は手続きが煩雑な上、確定申告をすることで社会保険料の算定基準の総所得金額を増やす結果につながりかねません。

具体的には、総所得金額が増えると国民健康保険の加入者(フリーランス等)の健康保険料が増加したり、配偶者・扶養控除等に影響が出る恐れがあります。

しかし、特定口座(源泉徴収あり)を選択して確定申告をしないようにすることで、総所得金額を増やすことがないメリットがあります。

ただし、以下の記載内容に注意が必要です。

● トータルの年間損益が損失で終わった場合に、3年間の「損失の繰越控除」を行う場合は、確定申告を行う必要があります。

● 複数の証券会社で口座開設している場合に、A証券会社とB証券会社の損益は通算されません。

A証券会社とB証券会社の損益を通算する場合は、確定申告を行う必要があります。

● 同一の証券会社の特定口座(源泉徴収あり)内で、ある銘柄の売買に限って損益通算にせずに「損失の繰越控除」に回したい場合でも、その取引は強制的に損益通算されてしまいます。

このデメリットを回避する方法や、複数の証券会社での損益通算などのテクニックは次の記事をご覧いただくと理解が深まると思います。

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2⃣ 特定口座(源泉徴収なし)の特徴

特定口座(源泉徴収なし)の特徴は、先程の特定口座(源泉徴収あり)と同じく、証券会社が1年間の損益を計算して年間取引報告書として(電子)書面を作成してくれる点です。

特定口座(源泉徴収あり)との違いは、源泉徴収という税金面の処理を証券会社で行ってくれません。

したがって、年間取引報告書の作成以外の処理は自ら行って、原則として確定申告をする必要が発生します。

3⃣ 一般口座の特徴

一般口座の特徴は、特定口座のように証券会社で年間取引報告書を作ってもらえません。

そのため、全ての取引記録を自分で記帳しなくてはいけません。

また、原則として確定申告を自ら行う必要があります。

下表は国税庁の確定申告作成コーナーの実際の入力画面です。

確定申告入力画面

毎回の取引を全て記録しておいて、確定申告の際に一つずつ入力していかなくてはなりません。

ここまでお読みいただいて、一般口座に何らメリットを感じられないと思います。

一般口座が存在する理由は、一般口座でしか出来ない取引があるからです。

例えば、未公開株(証券取引所には上場していない企業の株式)等、一般人が購入できないような取引です。

一般口座という口座種別を選択できますが、個人投資家にとって必要性はまずありません。

4⃣ 各口座の違いのまとめ

ここまでの口座種別の違いは下表のとおりです。

項目特定口座(源泉徴収あり)特定口座(源泉徴収なし)一般口座
年間取引報告書証券会社が作成します。証券会社が作成します。自ら作成が必要です。
確定申告原則、不要原則、必要原則、必要

口座種別の変更手続きについて

口座種別の変更は可能です。

ただし、注意点があります。

「特定口座から一般口座への変更」と「特定口座(源泉徴収あり)と特定口座(源泉徴収なし)の相互間の変更」は、保有株を変更する口座種別に移管することができます。

しかし「一般口座から特定口座への変更」に限り、移管が出来ません。

この場合、同じ証券会社内で一般口座の保有株は一般口座のまま残ることになり、別に特定口座が開設されることになります。

さらに、口座種別の変更の回数ですが原則として年度内に1回しかできません。

具体的には、株式等の売買および、配当の受け取りが一切ない場合は、年度内に変更ができます。

しかし、年度内に1回でも株式等の売買をしていると、口座種別の変更は翌年度からになります。

なお、年度内に1回も株式等の売買をしておらず、配当金のみを受け取っている場合は、特定口座(源泉徴収なし)から特定口座(源泉徴収あり)に限って変更が出来ます。

これらのことから、最初の口座種別の選択には注意する必要があります。

話は変わりますが、異なる証券会社ごとに口座種別を別の種類にすることは可能です。

例えば、A証券会社は特定口座(源泉徴収あり)でB証券会社は特定口座(源泉徴収なし)という具合です。

最後に、口座種別の異なる口座間の損益通算は、確定申告を行うことで可能です。

一般口座のメリットと特定口座(源泉徴収なし)のメリット

一般口座と特定口座(源泉徴収なし)にメリットもあります。

2種類の口座ともメリットの内容は同じです。

1⃣ 節税効果のメリット

最初に、雑所得扱いとなる20万円以下の譲渡所得に関して、所得税(15.315%)の確定申告が不要となるメリットです。

該当する人は、年末調整により所得税の納税を完了している給与所得者または、公的年金等による年間の収入金額が400万円以下である年金受給者です。

ただし、この場合でも住民税(5%)の確定申告は行わなければなりません。

つぎに、株式の利益以外の他に所得がない場合、基礎控除部分(所得税48万円・住民税43万円)まで確定申告の手続きが不要となる小さなメリットがあげられます。

該当する人は、所得のない専業主婦、学生、専業トレーダー等です。

この申告不要の上限金額を超えた部分から確定申告と税金の支払いが発生しますので、両方を申告不要にするには上限の低い住民税の43万円以下に利益を調整しなくてはなりません。

特に住民税の申告不要の43万円の上限以下にする理由は次のとおりです。

2017年の税制改正により、税務署に申告する所得税の確定申告と各市区町村役場に申告する住民税の確定申告の申告方法を別々に選択できるようになりました。

譲渡所得(配当所得を除く)に関しては、特定口座(源泉徴収あり)を選択していると、譲渡所得が43万円を超えても住民税のみを申告不要を選択できます。(住民税申告不要制度)

例えば、所得税の申告不要の上限の48万円を超える譲渡所得があった場合に、税務署に所得税の確定申告して、市区町村に住民税の確定申告しないという届出をすることで、申告不要と同じ扱いになります。(税制改正により2023年度以降は「住民税申告不要制度」は廃止されましたので取消線)

注意点は、特定口座(源泉徴収なし)または一般口座を選択後に、基礎控除を超える利益を出すと確定申告をしないという選択はできません。

その結果、フリーランス等は国民健康保険や配偶者・扶養控除等に影響する場合があります。

2⃣ キャッシュフローのメリット

特定口座(源泉徴収あり)は、確定申告の手続き等の処理が簡単になる一方で、利益を出した時点で税金が徴収されます。

例えば、Aの株式を100万円で買って200万円で売った場合の利益は100万円です。

しかし、20万円の税金が売買完了時に源泉徴収されますので、手元には約80万円しか残りません。

これに対して、一般口座と特定口座(源泉徴収なし)の場合は源泉徴収されません。

毎年2月頃の確定申告をするまでの1年間は、税引前の100万円が手元にのこることになります。

つまり、再投資する資金が手元に残るというメリットがあります。

毎月のように利益を出し続けられる専業投資家の場合は、再投資できる資金を積み上げられる点でメリットになります。

特定口座と一般口座の口座数の割合

特定口座は2003年1月1日から始まった制度です。

それまでは一般口座のみでした。

特定口座の制度開始から8年後の2011年、日本証券業協会が特定口座の普及の集計をした結果、84.2%が特定口座に変更済みという記録があります。

さらに4年後の2015年、、楽天証券の集計で特定口座の割合が90%という結果があります。

昔から一般口座を使っていた人がそのまま一般口座を残しているケースもありますので、徐々に減少していくと思われます。

また、特定口座の「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の選択割合については、2015年の楽天証券の集計で90%が「源泉徴収あり」を選択しているという結果でした。

その4年後の2019年6月末の日本証券業協会の集計では92.16%が「源泉徴収あり」選択しているという結果でした。

おおむね9割の人が特定口座を開設しており、さらにその内の9割が特定口座の源泉徴収ありを選択しています。

まとめ

証券口座の3つの種別のうち、一般口座に関しては特定口座に変更する場合に保有株を特定口座に移管出来ないデメリット等から、一般口座を使わざるを得ない理由がない場合はこの口座種別を選ぶ必要はありません。

また、特定口座(源泉徴収なし)は、節税目的で選択する人がいるようです。

例えば、複数の証券会社を開設して1つの証券会社の口座だけ特定口座(源泉徴収なし)にして節税口座にする方法です。

あるいは、デイトレーダーで毎日のように多額の利益を積み上げる場合は、税金を売買のたびに徴収されない方が資金効率が良いという方もいると思います。

しかし、投資を始めたばかりで今回の確定申告や節税の説明が難しいと感じられる場合は、特定口座(源泉徴収あり)を開設しておくことをおすすめします。

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