ご存知のとおり少額投資非課税制度の「NISA」は、株式の譲渡益や配当に課税される所得税・住民税が非課税になる制度です。
ただし、最大のデメリットとして損失が発生した場合に、利益が出た他の銘柄の利益分と相殺する「損益通算」や、損失を次年度以降に繰り越して利益が出た年度で損益通算する「損失繰越」という節税テクニックが使えない点です。
それゆえに、NISAは配当収入を継続して得る「長期投資向き」の制度設計になっています。
しかし、「損益通算」や「損失繰越」が出来ないというデメリットを補う方法は存在します。
この方法を用いれば、NISA制度のメリットを最大限に享受することが出来るでしょう。
この記事では、その具体的な方法をご紹介しています。
【 目 次 】
NISAで損失繰越が出来ない欠点を補う方法
答えは長期投資向けに設計されている投資信託の「特別分配金(利益超過分配金)」を利用する方法です。
特別分配金(利益超過分配金)は、「元本の払い戻し」に該当します。
たとえば、A株を1,000円で購入したとします。
そして、A株の分配金(配当)の内訳は、普通分配金が300円で、特別分配金(配当)が200円であったとしましょう。
このうち、普通分配金の300円については、あなたが指定する口座で直接に受け取ることになります。
特別分配金については、あなたは直接に受け取ることはなく元本に払い戻す形で支払われることになります。
つまり、取得単価1,000円で購入したA株の取得単価が800円に減少する形で元本に払い戻されることになります。
そして、最終的にA株を売却した際に受け取る形になります。
言い換えると、A株の普通分配金の300円は受け取って生活資金として使用したり、再投資することが出来ます。
しかし、特別分配金は売却するまで受け取れない分配金になります。
さて、この特別分配金が定期的に支払われるとしたらどうでしょうか?
徐々に取得単価が減少していくということになります。
最初は1,000円で取得したけれども、1回目の特別分配金で取得単価が800円に下がり、その次の特別分配金で600円にさがるという形になります。
仮に、取得単価が200円になったとすると売却時に損失が発生する可能性も下がることになります。
つまり、NISAの欠点とされている「損失」そのものが発生しにくい構図がここに完成するというわけです。
でも、分配金は定期的に直接に受け取りたいし、長期投資して最後に損失が出にくいというだけではメリットにならないという考えが浮かぶかもしれません。
そして「普通分配金の利回りが高く、特別分配金の利回りも良い銘柄があるのだろうか?」という発想に行きつくのではないでしょうか?
NISAの損失繰越の欠点を補う裏技「インフラファンド」
「インフラファンド」という投資信託があります。
J-REITに類似した仕組みを持つインフラファンドは定期的に「利益超過分配金」という特別分配金を出すことで知られています。
まだ、若い市場で上場しているのは7銘柄と市場規模はJ-REITの10分の1くらいの市場です。
インフラファンドは、空港設備、道路、発電設備等のインフラ設備への投資を前提としたファンドになります。
現状は、太陽光発電設備に投資するファンドがほとんどです。
太陽光発電では「FIT制度」と呼ばれている国の制度があります。
これは、国が固定価格で20年間にわたって電力を買い取る制度です。
インフラファンドの投資法人は、国の制度に守られた安定した利益に基づいてオペレーターから「賃料」を得る仕組みをとっています。
国が利益が担保している制度に基づく運用のため安定性は抜群といえます。
少なくとも2026年までは安泰と言えると思います。
具体的には、いちごグリーンインフラファンド投資法人(9282)が10年間の分配金予想を上場時に公開しています。
10年先までの分配金予想を出せるという点からも安定性があると言えると思ます。
いちごグリーンインフラファンド投資法人(9282)の2020年3月23日の投資口価格は1口あたり55,700円です。
このグラフを例に、2020年3月23日に55,700円で購入して2026年6月期まで保有したとすると、特別分配金の合計は14,820円で元本の払い戻しとなります。
取得単価は40,880円まで下がるという結果になります。
言い換えると、取得時点の投資口価格から20%下落しても損失にならないという計算になります。
普通分配金は平均すると約1,700円ですから、受け取れる分配金利回りは年間で3%程度になります。
いちごグリーンインフラファンド投資法人(9282)のように特別分配金が多すぎると受け取れる普通分配金の利回りは低下してしまいます。
この点で特別分配金の割合が多いインフラファンドは利回りの面で魅力が薄れてしまいます。
そこで、次にインフラファンドで特別分配金が少な目の投資法人をご紹介します。
タカラレーベンインフラ投資法人(9281) NISAの損失繰越の欠点を補う裏技
こちらは、インフラファンド市場初の上場を果たしたタカラレーベンインフラファンド投資法人(9281)の分配金の実績グラフです。
先程のいちごグリーンインフラファンド投資法人(9282)と比べると、分配金が半年に1回である点と特別分配金の少なさが特徴的です。
同投資法人は積極的に個人投資家向けの説明会に参加することでも知られており、そのプレゼンテーションでも利益超過分配金をなるべく少なくすることに注力しているという説明を繰り返しています。
2020年3月23日の同投資法人の投資口価格は1口あたり100,900円です。
世界的な移動制限による株安の暴落で投資口価格が半分以下になるJ-REITがある中において、下落率が15%程度という安定感もあるようです。
2020年5月期・11月期の分配金予想のうち普通分配金は6,324円です。
3月23日時点の年間利回りで6.2%程度が見込めます。
また、2020年5月期・11月期の分配金予想のうち特別分配金(利益超過分配金)は682円になります。
年間で受け取れる普通分配金が年間6%を超えており、かつ、取得単価が少しずつさがる点で損失を抑えられる可能性も兼ね備えています。
現在、同ファンドの資産規模はインフラファンド全体で2位です。
格付においてはインフラファンド内でトップのA⁻(ポジティブ)の評価を取得しています。
カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人(9284)NISAの損失繰越の欠点を補う裏技
こちらはインフラファンド市場でトップの資産規模をもつカナディアン・ソーラー・インフラ投資法人(9284)の分配金実績と予想のグラフになります。
同投資法人は格付でA⁻(安定的)を取得しており、ソーラーパネルの製造からメンテナンスまでを自社グループで一括する垂直統合モデルを展開している強みがあります。
さて、グラフを見てみますと、上場当初は特別分配金(利益超過分配金)と普通分配金(利益分配金)が半分ずつくらいです。
しかし、ここ最近と将来の分配金予想を見ると明らかに普通分配金の方が多くなるように意識されていることが分かります。
投資家の意見を反映しているものと思われます。
2020年3月23日の同投資法人の投資口価格は1口あたり102,900円です。
最近はタカラレーベンインフラ投資法人の投資口価格と同水準になる傾向があります。
現在の投資口価格で2020年6月期・12月期の分配金予想のうち普通分配金は、5,889円で、年間利回りは5.7%程度あります。
2020年6月期・12月期の分配金予想のうち特別分配金(利益超過分配金)は1,511円です。
年間利回りが5%を超えている今は投資機会になるかもしれません。
まとめ
「NISA」は長期投資に向いている商品設計ですが、インフラファンドやJ-REITとの相性は抜群といえます。
J-REITの中にも特別分配金を出すことがある投資法人もありますが、継続的に出すことになるのはインフラファンドです。
それだけに投資主としては予想や計画が立てやすいといえます。
皆様の参考になれば幸いです。
追記(2024年01月06日)
私はインフラファンドに2018年から投資をしていましたが、2023年6月までに全て売却してREITに切替えてました。
インフラファンドは「FIT制度」による利益が失われる2032年頃から利回りが落ちていくことが予想されるためです。
インフラファンドの減価償却を考えると2029年ごろから分配金に影響が出はじめるかもしれません。
インフラファンドの利回り良いという安易な理由だけで投資せず、自分で調べることが大切だと思っています。
詳細は、機会があれば記事にしたいと思います。